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この鉢砕には、思い出が詰まっている。
1989年。平成元年4月。31歳で、私は、日本拳法道木立先生の門下に入門した。
その頃、身長・年齢ともに私と同じくらいだったが、がっちりした、剛柔流二段の人が先に入門していた。
当時、既に、タックルが有効だと知られ始めた時期だったので、やたらタックルをされ、押し倒されて、屈辱を感じていた。
私は、169cm・63kの小兵だから、力業に弱い。アマレスでもない、空手家のタックルにやられる自分が、はがゆくて、何か方法は無いかと研究していた。
そのうち、思いついたのが、プロレスラー・橋下が使っていたDDTだった。
そうだ、タックルを受けたら、そのままDDTを使えば良いんだ。しめしめ。
しかも、よく考えてみたら、古術には、そのDDTに似た技、「鉢砕」があったのだ。
DDTみたいに派手ではないが、相手の首を折りに行く捨て身技で、実際に使うとほんとは、どうなるのか分からない。古術そのものは、形稽古で行うため、実際に乱取りで使ったことがない。
話しによると、相手の首を折る危険な技だとは聞いていたが、ほんとかどうかも私に分かる訳がない。
鉢砕で絞めてやると思った週の乱稽古で、私は、タックルを誘うように軽く左のジャブを出した。
いつも、そこで、タックルで押し倒した成功体験からか、予想以上に、この釣りにひっかかったので、しめしめだった。
遠慮無く、首を絡めて、捨て身に落とした。
首が、ぐきという音が聞こえたがそのまま回転して、馬乗りになり、面に空撃を決めて、ざまあみろの会心の一場面であった。
その後、乱取りでは、そのお方は、私にタックルを二度としてこないようになった。
当時、生き残るために必死だった。相手の地力は私より上だったから、そういう中で生き残るために、私も必死で努力したが、古術の技に助けられたことが多々有り、次第に、古術の実戦性を知るようになった。
考えてみれば、バブル崩壊の前夜。私は、これからの日本経済のことなど何も考えずに、益荒男振りな男たちと闘い続け、自分が生き残ることだけを考えていた。