令和2年11月7日。土曜。午前の部。霧雨。香春町風門館本部道場。
行者:木霊丸氏
稽古内容:得物護身
豊前福光派古術得物第一法:元手。変手勝
1本目 一文字 初手:一文字切先、真名手:一文字柄打、変化:蹴足・釣鐘・膝頭
2本目 叩 初手:叩素首、真名手:楔返、変化:蔦絡
久しぶりに本部で、元手の稽古。
伝えながら、間違っていたり、うろ覚えの部分があり、木霊丸氏も大変だと思う。
木霊丸氏にとって、初めての手は、私にとっては、30年ぶりの手であることが多い。
稽古していて、違和感を感じたときは、間違ってる時。それを修正しながら磨き上げていく過程が楽しい。
埋まっている、宝物を掘り出す感じに近い。
30年もやってない技が、稽古している間にどんどんあふれ出すから不思議なものだ。身体に刻み込んだ技というのは、脳の回路の奥に、しまわれているもんだなと我ながら感心している。
古術にとって形は入り口である。その入り口から入って、千変万化する手業を口伝で伝承する。形から入るが、形にとらわれない。
そして、その手業が、双手ではどう使うのか、当て身ではどうなるのか。
一つの幹から無数の枝があるが如く、古術と言う一つの幹から無数の手業が無限大に生まれる。その壮大さが、たまらなく魅力的だ。
11月22日の風門祭では、その一部のみを見せることになる。また、演武慣れしていないので、いつもぐだぐだした感じになるが、そういうのを我々は気にしていない。
人に見せるのが目的ではない。入り口を動画に残すことが目的である。
先々、いつ絶えてもおかしくない状況だが、それで、400年続いてきた。
福光谷に人知れず咲く石蕗のように、今年も、この花の咲く頃に稽古が出来ている。
まさに、奇跡的だ。二人で、野天で、移ろいゆく季節と共に技を練る時、やはり、我々の中に、この手業を生み、練ってきた古術者の叡智を感じる。繋がっている。そう感じる時の喜びは、例えようが無い。